"Miss Twiggley's Tree"
ドロシア・ウォーレン・フォックス 作
By Dorothea Warren Fox
木の上で暮らしているツイグリーさんは、
人に会うのが苦手で、町の人たちからは、
変わり者で困った人だと思われていました……。
でも、大きな嵐がやってきて、町が大洪水におそわれたとき、
行き場をなくした人々を救ったのは、他でもない、
ツイグリーさんと木の上のおうちです!
ツイグリーさんは、町の人たち全員を、
安全な木の上のおうちにあたたかく迎え入れます。
人間だけでなく、
犬も、豚も、猫も、木の上の「避難所」にやってきて、
みんな笑顔になるのです。
*
この本の素晴らしいところは、
助けてもらった町の人たちの意識が変わるだけでなく、
ツイグリーさん自身も、町の人たちを助けることで、
大切なことに気づくという結末。
相手を助けること、受け入れることは、
自分を犠牲にすることでも、損をすることでもなく、
自分自身と、社会をより豊かにすることへつながる------
そんなメッセージが、やさしく伝わってきます。
アメリカでの初版は1966年の古い本ですが、
その後復刊され、今もなお世代を超えて愛されつづけています。
原書を初めて読んだとき、
大洪水という災害を描いているのに、なんて楽しく、
幸福感に満ちた作品なのだろうと胸をうたれました。
古き良きアメリカの心意気でしょうか。
翻訳出版は難しいと思った時期もありましたが、
こうして日本の子どもたちに紹介することが叶い、
とてもうれしいです。
豪雨で水浸しになった町の映像や、避難所についての報道が、
近年とても多くなったように感じます。
助ける側、助けられる側、どちらの心にも寄り添う作品であるように
願っています。
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この本の書評↓
(2017年 偕成社刊)